フリーワード

全ての商品を見る

  • カテゴリ
  • 素材
  • シリーズ

すでにアカウントをお持ちの方

アカウントお持ちでない方

メンバー登録

ショッピングバッグ

商品名が入ります
  • YVE110
  • 長財布 / Blue
  • 数量 : 1
  • \47,520

小計\47,520

ご注文に進む

Article

2020.08.01

日々の暮らしを彩るプロフェッショナルの仕事術 vol.4

「良いクリエイションを引き出すのは、当たり前を疑う力」
「SOMARTA」デザイナー 廣川玉枝氏

 

 

日本を代表するクリエイターをゲストに招き、独自の仕事術を伺う本連載。第四回は「SOMA DESIGN」の代表であり、ファッションブランド「SOMARTA(ソマルタ)」のデザイナーである廣川玉枝氏。無縫製ニットの技術を用いて「第二の皮膚」を体現した「Skin」シリーズは、レディ・ガガが着用したりニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されるなど世界的に話題を呼んでいる。華々しい経歴を持つ彼女だが、経営的な視点ではファッション業界のスピードの早い旧態的なサイクルに疑問を持ち、自分なりのサイクルを構築することに注力したそう。その深意を探る。

 

 

 Work

 

Zoff x Tamae Hirokawa, 2019
© Zoff

 

Skin series Nina, 2017
Photo: Sinya Keita (ROLLUP Studio.)
© SOMA DESIGN

 

Tamae Hirokawa x Yamaha Motor Design 02GEN “Taurs”, 2014
Photograph: Mitsuaki Koshizuka (MOREVISION)
© SOMA DESIGN

 


 

 

SOMARTA 2020AW “SCALE” Collection, 2020
Photo: Sinya Keita (ROLLUP Studio.)
© SOMA DESIGN

 
 

 interview

 

 

ファッションに魅了され、熱中した文化服装学院時代。

 

「入学した当時はDCブランド絶頂期。私はその存在をほとんど知らずにファッションの世界に飛び込んだんです」——。絵を描くのが好きな、真面目で普通の高校生だったという廣川さん。そんな彼女がファッションデザイナーを志したのは、自分が描いた服で女性がより美しくなれることが、まるでアートのように素敵だと考えたからだ。
 
「ファッションは好きでしたが、ブランドには詳しくなくて。デザイナーにも職人的なイメージを抱いていた私は、入学式でいきなりカルチャーショックを受けました。みんな見たこともない個性的な服に身を包んでいて、そんな服どこに売っているのとびっくりしたのを覚えています。」
 
当然、入学直後は想像と現実のギャップに何度も驚かされることになった。
 
「特に印象に残っているのが先生のこの言葉です。『良い服を見たり着たりして、美味しい物を食べて、常に美しいものを見て、とにかく良い物を知らなければ、良い服はデザインできないんですよ!』“美しさ”にすごく厳しい先生で、この金言は今でも胸に刻まれています。」
 
素直だった廣川さんはその言葉通り課題に人一倍真面目に取り組んだのはもちろん、美術館へ足を運んだり、学生コンテストなどにも積極的に参加。徐々にファッションデザイナーの夢を具現化していった。
 
廣川さんは「ファッションデザイナーになるためには、まずはどこかメゾンに入らなければならない」と考えた。この“○○のためには○○をしなければならない”という固定概念は、廣川さんの素直で真面目な性格を端的に表すものであり、そのために苦い経験をしてしまうことになるのだが、それはもう少し後の話。
 
就職してから数年後に現在に繋がる運命的な出会いがあった。たまたまポジションが空くからという理由でニットのデザインを担当することになる。
 
「自分の意図しないところからニットのデザインに関わるようになったんですが、デザインをする仕事の中で、カッティングを追求して立体的に服を作るよりも、テキスタイルがそのまま服になる服作りをしてみたいと思うようになったんです。ニットは一本の糸からその後の製品の性格を決めることができる。それが楽しくて」。
 
その後ニットのデザインに夢中になり原料や技術を追求する中で、無縫製ニットと出会うこととなったのだという。
 
「一本の編み糸だけでボディから袖までを一体成形できる無縫製ニットなら、“第二の皮膚”が作れるんじゃないかと思ったんです。」

 

 

ファッションの理想を体現した“第二の皮膚”。

 

当時はまだ珍しい存在だった無縫製ニット。だからこそ、廣川さんは可能性を感じたという。
 
「第二の皮膚というのはファッション界にある普遍的なテーマで、私がそれを知ったのは学生時代です。『身体の夢』展という展覧会の中で、三宅一生さんやジャン=ポール・ゴルチエさん、ヴィヴィアン・ウエストウッドさんなどプロのデザイナーたちが『第二の皮膚』をテーマに服を作るという展示がありました。そこで“一流のファッションデザイナーは、皮膚のような服を目指すものなんだ”と知り、私もいつか自分なりに表現してみたいと思うようになりました。」
 
無縫製ニットとの出会いは、まさに点と点が繋がるような出来事だった。
 
「30歳になるころには自分が思い描く服を自由に作れるようになり、仕事は楽しかったのですが、いざ将来を考えたときに、このままで良いのかだろうかと悩みました。更に成長するためには、このタイミングで独立しなければと思ったんです。職場の先輩や学生時代の友人たちも何人か独立をしていたし、そういうものだと思っていたから、特に不安はありませんでした。」
 
不安がなかったのは、“良いものを作れば売れるはずだ”という根拠のない思い込みがあったから。差し当たって準備したのは、デザインとコンセプトを向こう3年間6シーズン分考えたこと。それに対して経営に関することは何も戦略を立てていなかったという。
 
「当時の全てをかけて完成させた『ソマルタ』のファーストシーズンは、ショーの評価は高かったものの合同展示会に参加しても販売にはなかなか繋がりませんでした。有り難いことにPRの評判だけは良くて、たくさん取材をしてもらい雑誌にも載せてもらいました。でも今思えば当たり前で、どれだけ多くの人に見てもらっても、実際に服を買ってくれるのはバイヤーさんですから、その人たちの目に止まらなければ売れません。その中には最初のSkinシリーズもありました。」

 

“売るためには、とにかく良いものを作らなければならない。”その事だけに集中してしまったために、デビューと同時に大きな困難にぶつかってしまいました。このままでは3年先はおろか、半年先すら継続が怪しかった。
 
「ショーと展示会が終わって一週間経っても音沙汰がなく途方に暮れていたのですが、見に来てくれていたバイヤーさんの一人が海外出張に行っており、最終的にその方が新規オープンするショップのエクスクルーシブとして、コレクションのほとんどをオーダーしてくださったんです。」
 
影響力のあるお店だったため2シーズン目からは他店からもオーダーが入るようになり、ブランドは少しずつ回り出す。だが「本当に考えが甘かったと反省した恐怖の一週間でした」と廣川さんが語る通り、相当なプレッシャーであったことは想像に難くない。
 
そんな苦い経験を経て、ようやくビジネスを意識するようになったという廣川さん。良い服を作るだけではダメで、もっと広い視野を持たないといけない。奇しくも学生時代の先生の言葉を身をもって実感することとなった。今では信頼できるスタッフを雇い、会社の代表兼デザイナーとして活躍する。その中でファッションデザイナーとしての在り方や、仕事の仕方も大きく変わっていったという。
 
「学生時代は勘違いしていましたが、服は私一人で作っているのではありません。工場や流通、小売店やそのスタッフさんたちがいて、『ソマルタ』の個性的な服を喜んでくれる人たちがいる。服をつくる事が出来るのは、服づくりを支える多くの人がいるお陰なのだと気付いてからは、自分たちが出来ることの中で何が一番世の中に必要とされているのかを考えるようになりました。小さな循環でもいいから人々が喜んでくださり、そのサイクルが上手く回るような状況をしっかりと作っていくことが大切。もちろん数字(お金)も大切ですが、最低限、循環が滞っていないかということを軸に自分のビジネスを見るようになりましたね。」

 

 

周りに合わせていては良いものは作れない。21世紀型のデザイナーは未来を見据える。

 

ブランドとして意義のあるものをクリエイションし、良いものを作ることで還元していく。その方法を模索するようになったことで、既存のファッション業界の旧態的なサイクルに疑問を持つようになったと廣川さんは語る。
 
「ファッション業界って、年中無休で夜遅くまで忙しなく働いているイメージがありますよね。そんなことでは、やっぱり良い物は作れないと思うんです。周りのルーティーンに巻き込まれていては、良いクリエイションはできません。特にSkinシリーズは100年というスパンで見た時に定番になるようなものにしていきたいと思っているので、既存の業界のスタイルにはちょっと合わないのかもしれません。他から見たら毎シーズン同じような表現に見えても、実は細部を進化させながら継続的にデザイン・製作しています。」
 
“今”しか見ないで物を作っていると、時代が変わったときに古くなる。フルマラソンを全速力で走り続けるようなものづくりでは、途中でリタイヤするか、そのまま一生を終えてしまうことになりかねない。そうではなく、何百年も続く老舗のように長く愛される、そんなブランドにしていくのがデザイナーとしての理想だという。
 
「トレンドに追われる必要はないし、昔に比べてシーズン毎に作る服の型数も減りました。ショーだって費用対効果を考えれば毎回やることはないと思っていたので、あるときスパッとやめてみたんです。そうしたら、ショーに掛かっていたお金(これがかなりの金額が掛かるのだ)を無縫製ニットの開発費に回せるようになって、それまでやりたくても出来なかった開発ができるようになりました。」
 
当たり前を疑うということで、より良い循環が生まれた。それは、思っていた以上のプラスとなって還ってきた。
 
「Skinシリーズの変化は見た目に大きく分からないので、毎回同じように見えるから新しいものを見せろと批判を受けたこともありましたけれど、同じ事を10年間アップデートし続けられたことが、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されるきっかけにもなったのだろうと思っています。」
 
「とはいえ経営者として、自分が上手く会社を回せているのかといったら自信はないですけどね(笑)」と廣川さんは謙遜するが、現状「ソマルタ」は良いサイクルで回っているように思える。その証拠といってはなんだが、ファッションブランドとしてはかなりゆったりと仕事ができているそうだ。時間的な余裕が生まれたことでクリエイションの源となる“美しいもの”をインプットする時間もしっかりと取れるようになった。
 
「18時以降は時間を自由に使えるようになったので、美味しいものを食べに行ったり美術館に行ったり、友人に誘われた展覧会などにも足を運んでいます。友人はどんなところが面白いと思っているんだろうとか、こんなシーンではこういう服があったらいいかもしれないというような視点で見てみると、デザインをする際のいいインプットになります。それは例え服じゃなくても還元できると思うんです。」
 
そういった柔軟性を発揮できるデザイナーを、廣川さんは21世紀型のデザイナーと表現する。
 
「衣服だけをデザインすることが20世紀型のファッションデザイナーだとすれば、21世紀のファッションデザイナーはジャンルに捕らわれず様々なクリエイションができることが求められるだろうと思っています。実は『ソマルタ』は私たちの会社『SOMA DESIGN』の中のひとつのブランドという位置づけになっていて、これまでにはロボットや車椅子などのデザインも手掛けています。ファッションとは服だけに限らず、“身体に関わるデザイン”と幅広く捉えることができます。他分野とのやり取りには気付きがたくさんあって、とても得るものは大きいです。」
 
さらにコロナ禍を経た今、ブランドの在り方やクリエイションをもう一度ゼロから考えないといけない時期に来ていると廣川さんは感じているという。
 
「特に『ソマルタ』はハレの日に着ていただくような服も多いですから、人が中々集まれない状況下では作るべき服も変わってくるはず。新しい発想のチャンスと捉えてみれば、面白いじゃないですか。」
 
はじめた当初は目の前の事に捕らわれすぎて周りが見えていない事もあったが、あらゆる困難を乗り越えてきた廣川さんは今、広い視野を持ち未来を見据えている。

 
 

 Column

 

日々を彩るプロフェッショナルの愛用品

 

プロフェッショナルたちが普段持ち歩いている必需品や仕事道具を見せていただきながら、モノに対するこだわりを紐解く。

 

 

「これを見ると信じられないかも知れないですけど、以前は服も小物も黒いものばかり身につけていましたし、デザインする『ソマルタ』の服もほとんどが黒だったんです。」
 
それが最近は公私ともに色を取り入れるようになったという。きっかけは、スリランカ旅行。とある世界遺産の寺院に参拝しようとしたときのことだった。
 
「上下黒の服を着ていたのですが、現地のガイドさんに仏教では黒は不吉な色だから着替えてきてくれと言われたんです。スリランカでは参拝の際には白を着るそうで、それを知ってから色にとても興味が湧いてきたんです。」
 
また、それをきっかけに大好きな植物の柄の小物を取り入れるようになったそう。それがこのボタニカル柄のステンレスボトルだ。「これはアントワープで買ったものです。実はこの香水も植物から出るような爽やかな香りが癒されるんですよね。」

 

 

植物タンニン鞣しの革に手染めを施した、有機的なyuhakuのアイテムにも共感するところがあるということで、廣川さんに選んでもらい贈らせていただいたのがyuhakuの代表作「Veratula」シリーズの二つ折り財布だ。

 

 

「水性の染料を使って手染めをしているからほぼ廃液が出ないと聞いて、環境に配慮されているのもとてもいいと思いました。落ち着きのあるグラデーションも綺麗ですよね。色は身に着けたり見たりすることで、知らず知らずのうちに影響されるものです。今では持ち物やコーディネートには欠かせません。今季の『ソマルタ』も様々な色を取り入れていますので、ぜひご覧ください。」
 
http://www.somarta.jp

 
 

Profile

 

SOMA DESIGN クリエイティブディレクター/デザイナー

廣川 玉枝 / Tamae Hirokawa

 

2006年「SOMA DESIGN」を設立。同時にブランド「SOMARTA」を立ち上げ東京コレクションに参加。第25回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。単独個展「廣川玉枝展 身体の系譜」の他Canon[NEOREAL]展/ TOYOTA [iQ×SOMARTA MICROCOSMOS]展/ YAMAHA MOTOR DESIGN [02Gen-Taurs]など企業コラボレーション作品を多数手がける。
2017年SOMARTAのシグニチャーアイテム”Skin Series”がMoMAに収蔵され話題を呼ぶ。2018年WIRED Audi INNOVATION AWARDを受賞。

 
 

  Goods

 

廣川 玉枝氏が選ぶyuhakuのアイテム

Veratula 二つ折り財布

商品番号:YVE130
カラー:Blue

 

 

Pick up 記事

長く使っていただくための正しいメンテナンス
vol.02: 引っ掻き傷編

yuhakuの製品だから出来るケア方法や、特徴など、お客様に長く商品を使っていただくためのメンテナンスです。今回はひっかき傷がついてしまった場合の対処方法。

続きを読む >

お手入れ方法

2020.03.10

長く使っていただくための正しいメンテナンス
vol.01: 水ジミ編

革製品を長持ちさせるためには日頃の手入れが必要不可欠。yuhakuの製品だから出来るケア方法や、特徴など、お客様に長く商品を使っていただくためのメンテナンスです。革に水が付着してしまった時の対処について。

続きを読む >

お手入れ方法

2020.03.08

世界一の手染めレザーブランド yuhakuができるまで
vol.04: 商品開発

手染めによる独特なグラデーションだけではなく、使いやすさでも評価の高い「yuhaku」。今回は商品開発について紹介していこうと思う。

続きを読む >

こだわり

2020.02.15

世界一の手染めレザーブランド yuhakuができるまで
vol.03: 磨き

手染めと並んで仕上がりの印象を大きく左右するのが磨きの工程。「yuhaku」では、バフ掛けやグレージングなどといった磨き・艶出しの工程に多くの時間を割いている。豊かな質感や触感、艶感と、手染めによる美しいグラデーションが響き合うことで「yuhaku」の革が完成する。

続きを読む >

こだわり

2020.02.13

世界一の手染めレザーブランド yuhakuができるまで
vol.02:手染め

仲垣氏が長年にわたって行ってきた絵画制作の技術をもとに、研究を重ねて完成させたのが「yuhaku」の手染め技術。革を染めながら、色を重ねていくこの技法は世界でも類を見ない独自のものだ。

続きを読む >

こだわり

2020.02.11

世界一の手染めレザーブランド yuhakuができるまで
vol.01: 革の品質管理

何色もの染料を使い、手染めで美しいグラデーションを作り出す「yuhaku」のレザー。このブランドのモノづくりは、世界でも唯一と言われる独創的な染色手法と細部にまで行き届いたこだわりに支えられている。

続きを読む >

こだわり

2020.02.10